動画で話したこと
動画では、更年期のホルモン療法のうち、エストロゲンだけを使う形の薬と、アルツハイマー病の脳の変化との関連を調べた論文を紹介しました。
亡くなったあとに脳を調べた記録で、薬を使っていたと申告した人のほうが、アルツハイマー病の変化が強く出ている段階にいるオッズが低い、という関連が出ていました。0.65倍で、幅は0.48から0.88までです。生きているあいだの記録でも、認知症と診断されるオッズが0.61倍という関連が出ていました。
そのうえで動画がいちばん長く扱ったのは、著者自身が要旨の最後に置いた1つの文でした。その文の中に、因果には答えていないという言葉と、守る働きを示唆するという言葉が、両方入っています。
論文としては、珍しい書き方ではありません。前半で限界を断り、後半で自分たちの見立てを述べる。よくある形です。著者は限界の節でも、因果に踏み込まないようにはっきり書いています。隠しているわけではありません。
問題は、読む側がどちらを持ち帰るかです。
短い動画で話せたのは、ここまででした。
この記事では、そこから先に進みます。誰を調べたのか。どこで人が入れ替わったのか。0.65という数字は、そもそも何のオッズなのか。2つのデータの集まりで出方がどう違ったのか。そして、この論文の中には、本文と表とで数字がそろっていないところが複数あります。それも並べます。
先に書いておきます。この記事は、薬を始めることも、やめることも勧めていません。ここで扱うのは、一つの論文の中にある数字の幅と、その読み方だけです。
誰を、どう分けて、いつ測ったか
くじ引きはありません
いちばん大事なところから書きます。
この研究は、後ろ向きの縦断コホート研究です。すでに集められていた記録を、あとから掘り起こして比べています。参加者をくじ引きで2つに分け、片方に薬を渡し、片方に渡さない、という場面はどこにもありません。
ですから、薬の試験でよく出てくる「割り付けどおりに比べたのか、実際に薬を受けたかどうかで比べたのか」という区別は、この研究には当てはまりません。割り付けそのものが無いからです。
代わりに、この研究で人が2つに分かれた基準は、こうです。
- 使った人:研究のどこかの受診のときに、「いま、エストロゲンだけのホルモン療法を使っています」と申告した人
- 使っていない人:どの受診でも、そう申告しなかった人
自己申告です。処方の記録や薬局の記録ではありません。そして「いま使っている」という申告なので、研究に入る前に使っていて、受診のときにはやめていた人は、ここでは「使った人」に入りません。研究の途中でやめた人は、使っていると申告した受診があるので「使った人」に入ります。
2つのデータの集まり
使われたのは、2つのデータの集まりです。
1つ目は NACC(National Alzheimer's Coordinating Center)です。米国国立老化研究所が資金を出している、これまでといまを合わせて37か所のアルツハイマー病研究センターのデータで、2005年6月21日から2023年2月22日までのあいだに集められました。
2つ目は ADNI(Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative)です。複数の施設にまたがる研究で、2003年から2018年のあいだに集められました。アルツハイマー病を早く見つけて治療するための指標を探すことを目的にした研究だと書かれています。
どちらも、アルツハイマー病の研究に参加した人たちの記録です。街で無作為に選ばれた人たちの集まりではありません。
入った人、外れた人
対象になったのは、50歳以上の女性です。主要な評価項目のうち少なくとも1つについて臨床か剖検のデータがあり、ホルモン療法の使用について少なくとも1回ぶんの受診のデータがある人が入りました。男性は除外されています。
ここから先が、この研究の形を決めています。
エストロゲンとプロゲスチンを合わせた併用療法を申告した人は、除外されました。エストロゲン単独も使っていたかどうかに関係なく、外されています。論文は、この療法がアルツハイマー病の危険を上げる可能性を示した過去の知見があるため、と理由を書いています。
つまり、この研究が比べているのは「ホルモン療法を使った人と使わなかった人」ではありません。エストロゲンだけを使ったと申告した人と、ホルモン療法を使ったと申告しなかった人です。併用療法の人は、比較のどちらにもいません。
塗り薬(局所製剤)も、使用者の分類には入れられていません。NACC では塗り薬を使っているかどうかの情報が得られないと書かれています。ADNI では、塗り薬を使っていた人は使った側からも使っていない側からも明示的に外されています。
さらに、各評価項目の解析に入るのは、その人が薬を使っていると申告した時点と同時か、それより後にデータがある人だけです。そして評価項目の値は、最後に得られたものが使われています。加齢に伴う変化や認知機能の低下が積み上がるのを見られるように、と説明されています。共変量のデータがない人も除外されています。
NACC の中で、人数がどう絞られていったか
いちばん外側が19,402人です。これは NACC のうち、生きているあいだの臨床のデータで解析に入った人数です。このうち1,841人が薬を使ったと申告した人、17,561人が申告しなかった人です。動画で紹介した0.61倍は、この19,402人から出た数字です。
次が2,959人です。亡くなったあとに脳を調べた記録があった人たちです。19,402人の15%ほどにあたります(この割り算はこの記事のものです。論文がこの計算を書いているわけではありません)。亡くなった人のうち、誰の脳が調べられたかには、偏りが入りうると論文は見ています。論文はこれを「剖検を受けるかどうかの選択による、起こりうる偏り」と呼び、後で説明する重み付けで織り込んでいます。
いちばん内側が258人です。2,959人のうち、エストロゲンだけの薬を使ったと申告していた人です。動画で紹介した0.65倍は、この258人と、残る2,701人との比較から出ています。つまり、この論文の主要な結果を支えているのは、258人という人数です。
| 臨床のデータがそろい、解析に入った女性 | 19402人 |
|---|---|
| そのうち、亡くなったあとに脳を調べた記録があった人 | 2959人 |
| そのうち、エストロゲンだけの薬を使ったと申告していた人 | 258人 |
人数だけを表した図です。関連の大きさを表すものではありません。3段目の258人は、2段目の2,959人のうち薬を使ったと申告した人です。残りの2,701人が、使ったと申告しなかった人にあたります。なお、Table 2 に載っている段階ごとの人数を足すと、主要な評価項目が実際に得られた人数はこれより少なくなります。あとの節で扱います。
論文のどこ:論文の Results の最初の段落と、Table 1、Results の Neuropathologic Outcomes の節の書き出しです。絞り込みの流れ図は Fig. 1 にあります
誰と誰を比べたのか
2つのグループは、比べる前からいくつもの点で違っていました。論文の Table 1 が、その違いを並べています。NACC の臨床データの19,402人では、次のようになっています。
- 初回受診時の年齢:使っていない人72.1歳(標準偏差9.5)、使った人69.8歳(標準偏差8.9)
- 教育年数:14.7年と15.7年
- 白人の割合:76.7%と90.3%
- 研究に参加していた年数:3.9年と5.6年
- 受診した回数:4.2回と5.7回
いずれも、統計的な差があると報告されています。使った人のほうが、若く、教育年数が長く、白人が多く、研究に長く通い、受診回数も多い。
剖検の記録がある2,959人でも、同じ向きです。白人の割合は92.4%と97.3%、教育年数は14.7年と15.5年、研究に通っていた年数は4.1年と5.6年です。
亡くなったときの年齢だけは、ほとんど同じでした。使っていない人が82.2歳、使った人が81.9歳で、統計的に意味のある差ではありませんでした(p = 0.64)。
論文は、この違いのうちいくつかを計算の中で調整しています。NACC の解析では、年齢(臨床のデータなら受診時の年齢、剖検のデータなら死亡時の年齢)、教育年数、APOE という遺伝子の e4 という型をいくつ持っているか、人種(白人か非白人か)、最近のまたは活動性の高血圧があるかどうかの5つです。ADNI では標本が小さく人種と高血圧の情報に欠けがあるため、年齢と教育年数と APOE の3つを基本の共変量にし、人種と高血圧は感度分析で足しています。
調整するというのは、測れている違いの分を計算で差し引くということです。測っていない違いは差し引けません。この点は、あとでもう一度出てきます。
この数字は、何を指しているか
0.65倍は、何が0.65倍なのか
主要な評価項目は、ABC スコアというものです。亡くなったあとに脳を調べて付ける点数で、3つの中身からできています。
- A:アミロイドという物質の沈着
- B:Braak stage と呼ばれる、神経原線維の変化の広がり
- C:CERAD という基準で見た、神経突起斑の分布
この3つを合わせて、0から3までの段階で表します。論文では「アルツハイマー病ではない」「低い」「中くらい」「高い」の4段階として示されています。
ここが大事なところです。0.65倍というのは、病気になる確率が0.65倍という意味ではありません。Table 2 の注に、この解析で使ったモデルの意味が書かれています。それによると、このオッズ比は「より高い段階にいるオッズ(それより低い段階すべてをまとめたものと比べたときの)」を表しています。
言い換えると、亡くなったあとに脳を調べたときに、より重い段階に分類されていた度合いの比です。将来その病気になる確率の比ではありません。測ったのは、すでに亡くなった人の脳の所見です。
論文の図の説明には、オッズ比が1を下回るときは、その所見が見られる度合いが使った人のほうで低いことを意味する、と書かれています。ここで扱っている所見はすべて病理的なものなので、度合いが低いことは使った人にとって良い方向と一致する、とも添えられています。
幅は、何を表しているか
0.48から0.88という幅は、95%信頼区間です。
同じやり方で研究を繰り返して幅を作り直すと、その95%が本当の値を含む、という考え方で計算されたものです。いま目の前にある1本の幅について、95%の確率で当たっている、という意味ではありません。幅が狭いほど、推定の揺れが小さいことを表します。
倍率の指標では、差がない位置は1です。0ではありません。1というのは「使った人と使わなかった人で、オッズが同じ」という位置です。
ですから、幅が1をまたいでいるかどうかを見ます。0.48から0.88なら、1をまたいでいません。0.08から1.10なら、またいでいます。この記事の図には、すべて1の位置に線を引いてあります。
ただし、幅が1をまたがないことは、「この薬のおかげだ」という意味ではありません。それは幅の話ではなく、比べている2つのグループがもともとどう違うかの話です。
記憶の指標のβは、倍率ではありません
副次的(探索的)な評価項目には、血液や髄液で測ったアミロイドの指標も入っています。こちらはオッズ比ではなく、標準化されたβという別の形で報告されています。
血漿の Aβ42/40 という比は、β=0.443、幅は0.157から0.729です(要旨では0.44、0.16から0.73と書かれています)。髄液の Aβ42 は、β=0.066、幅は0.002から0.131です(要旨では0.07、0.002から0.13)。
この指標は、向きが分かりにくいものです。論文は、血漿の Aβ42/40 の比が低いことと、髄液の Aβ42 が低いことが、脳の病変が多いことを示す、と説明しています。Aβ42 が減るのは、溶けにくい Aβ42 が脳の中で溶けない塊に変わっているためだ、という説明です。
つまり、この2つのβが正の値だったことは、薬を使ったと申告した人のほうで、脳の病変が少ないほうに寄っていたという向きにあたります。
一方で、アミロイドを画像で見る PET、タウを見る PET、脳の代謝を見る FDG PET、髄液のリン酸化タウでは、関連は見つかっていません。論文は、血漿や髄液の測り方のほうが、早い段階のアミロイドの蓄積に対して感度が高い可能性がある、と説明しています。
βは倍率ではないので、1をまたぐかではなく、0をまたぐかで見ます。この記事の図には、倍率のものだけを載せています。
結果を、幅で見る
亡くなったあとに脳を調べた記録
まず、この論文の主要な評価項目と、同じ剖検の記録から出た所見を並べます。
亡くなったあとに脳を調べた記録(オッズ比。1が差のない位置)
まず、横の目盛りと、1の位置の線を見てください。オッズ比の図では、差がない位置は0ではなく1です。線より左にあれば、使ったと申告した人のほうでその所見が重い側にいた度合いが低かった、という向きになります。
1本目が、この論文の主要な評価項目です。アルツハイマー病の変化の段階を表す ABC スコアで、0.65、幅は0.48から0.88でした。幅は1をまたいでいません。この解析には258人と2,701人が入ったと書かれています。
2本目は、小さな脳梗塞の跡です。0.59、幅は0.40から0.88でした。3本目は脳アミロイド血管症で、0.77、幅は0.60から0.98です。どちらも1をまたいでいませんが、これらは副次的(探索的)な評価項目です。論文は副次的(探索的)な評価項目に多重比較の補正をかけており、その基準(p<0.0045)を満たしたと印が付いているのは、この2つのうちでは小さな脳梗塞の跡のほうだけです。脳アミロイド血管症は、補正をかける前の基準で1をまたがなかった結果です。
4本目が海馬の萎縮です。0.75ですが、幅は0.56から1.01で、わずかに1をまたいでいます。論文は関連は見られなかったと書いています。ここを見落とすと、剖検の所見がすべて同じ向きにそろっていたように読めてしまいます。
この図に入れていない所見もあります。前頭側頭葉変性に関わる2つの所見と、単一または複数の出血の有無(論文の本文の段落では「複数の出血」と書かれています)です。いずれも幅が大きく1をまたいでおり、関連は見られなかったと報告されています。
| アルツハイマー病の変化(ABC スコア。主要な評価項目) | 0.65(0.48 〜 0.88) |
|---|---|
| ラクナや梗塞(小さな脳梗塞の跡) | 0.59(0.4 〜 0.88) |
| 脳アミロイド血管症 | 0.77(0.6 〜 0.98) |
| 海馬の萎縮 | 0.75(0.56 〜 1.01) |
| 差がない位置 | 1 |
いずれも、エストロゲンだけの薬を使ったと申告した人のオッズを、申告しなかった人のオッズで割った値です。1より小さいほど、その所見が重い側に分類されていた度合いが低かったことを表します。1をまたぐかどうかだけで、意味の大きさは決まりません。
論文のどこ:論文の Table 2 の上半分と Fig. 2A です。文章では Results の Neuropathologic Outcomes の節にあります
主要な評価項目については、論文は2つの確かめ方を足しています。
1つ目は、逆確率重み付けというやり方です。亡くなった人のうち、誰が剖検を受けて誰が受けなかったかには偏りがあります。そこで、年齢、APOE の型、人種、教育年数と、薬を使ったかどうかから「剖検を受ける確率」を予測するモデルを作り、その予測値をもとに重みを付けて計算し直しています。その結果は0.61、幅は0.45から0.84でした。
2つ目は、血管の病変の分を差し引く確かめ方です。脳アミロイド血管症の重さを共変量に足すと0.67(幅0.50から0.92)、ラクナや梗塞の有無を足すと0.66(幅0.49から0.90)になったと報告されています。
生きているあいだの記録
次に、亡くなる前の、通っていたあいだの記録です。こちらは2つのデータの集まりの両方で解析されています。
生きているあいだの記録(オッズ比。1が差のない位置)
1本目は、最後の受診のときに医師が認知症と診断していたかどうかです。0.61、幅は0.55から0.67でした。1,841人と17,561人が入っています。動画で紹介したのが、この数字です。
2本目は、記憶や生活機能の低下の症状を段階で表す指標です。0.67、幅は0.61から0.74でした。動画では数字が増えすぎるので落としましたが、同じ向きです。
3本目は、1本目とまったく同じ評価項目を、もう一方のデータの集まりで見たものです。0.667、幅は0.437から1.018で、1をまたいでいます。p 値は0.060と報告されています。入っているのは91人と1,253人です。
4本目も、2本目と同じ評価項目を、もう一方のデータで見たものです。0.814、幅は0.55から1.205で、こちらも1をまたいでいます。
点の位置だけを見ると、1本目と3本目はほとんど同じところにあります。違うのは幅の広さです。人数が少ないと幅が広がり、1をまたぎます。ここで「片方では関連があり、片方では無かった」と読むと、実際より大きな違いを見てしまうことになります。
| 認知症の診断(人数の多いほうのデータ) | 0.61(0.55 〜 0.67) |
|---|---|
| 記憶や生活機能の低下の症状(人数の多いほうのデータ) | 0.67(0.61 〜 0.74) |
| 認知症の診断(人数の少ないほうのデータ) | 0.667(0.437 〜 1.018) |
| 記憶や生活機能の低下の症状(人数の少ないほうのデータ) | 0.814(0.55 〜 1.205) |
| 差がない位置 | 1 |
上の2本と下の2本は、別のデータの集まりから出た値です。同じ評価項目でも、入っている人数がまったく違います。上の2本は1,841人と17,561人、下の2本は91人と1,253人、98人と1,324人です。
論文のどこ:論文の Table 3 の上半分と Fig. 3A です。文章では Results の Clinical Outcomes の節にあります
記憶の検査(RAVLT)の結果は、2つのデータで向きが違いました。本文の段落では、人数の少ないほうで、薬を使ったと申告した人のほうで、即時記憶と学習の点数が高いという関連が報告されています。人数の多いほうでは、即時記憶も学習も忘却も、関連は見られませんでした。
ただしこの記憶の検査については、本文の段落と Table 3 とで数字がそろっていません。あとの節で扱います。
確かめ方と部分集団で見たとき
論文は、主要な評価項目について、確かめ方を変えた解析と、いくつかの部分集団に分けた解析を行っています。このうち部分集団に分けたものは探索的な解析で、多重比較の補正の外にあると論文自身が書いています。
主要な評価項目(ABC スコア)を、確かめ方と部分集団で見たとき
1本目が全体の値です。0.65、幅は0.48から0.88。これがあらかじめ決められた主要な評価項目で、多重比較の補正の対象にはならないと論文が書いています。
2本目は、剖検を受けた人と受けなかった人の偏りを重み付けで織り込み直したときの値です。0.61、幅は0.45から0.84。1本目とほぼ同じところにあります。これも主要な評価項目そのものに対する確かめ方で、部分集団に分けたものではありません。
3本目と4本目は、薬の種類で分けたものです。結合型エストロゲンでは0.55、幅は0.34から0.88。エストラジオールでは0.72、幅は0.50から1.05で、1をまたぎます。論文は、標本が小さく結論は出せないとしたうえで、結合型エストロゲンのほうが強く関連していたかもしれない、と書いています。両方を使ったと申告した25人は、人数が少ないため報告されていません。
5本目が、60歳より前に使い始めたと申告した61人です。0.30と、この論文の本文と表に出てくる中でいちばん小さい値です。ただし幅は0.08から1.10で、1をまたいでいます。p 値は0.059と報告されています。
5本目の幅の広さを見てください。0.08から1.10というのは、オッズが10分の1を下回るほど小さかったかもしれないという側と、1をわずかに超えるほど大きかったかもしれないという側が、同じ幅の中に入っているということです。61人から出た推定なので、これだけ揺れます。点の位置だけを取り出して「60歳前ならもっと効く」と読むことは、この幅からはできません。
| 全体(258人。主要な評価項目) | 0.65(0.48 〜 0.88) |
|---|---|
| 剖検の偏りを重み付けで織り込んだとき | 0.61(0.45 〜 0.84) |
| 結合型エストロゲンを使った人(探索的) | 0.55(0.34 〜 0.88) |
| エストラジオールを使った人(探索的) | 0.72(0.5 〜 1.05) |
| 60歳より前に使い始めたと申告した61人(探索的) | 0.3(0.08 〜 1.1) |
| 差がない位置 | 1 |
上の2本は、あらかじめ決めた主要な評価項目そのものの値です。2本目は、剖検を受けるかどうかの偏りを重み付けで織り込み直したものです。下の3本が、あとから分けて見た探索的な解析で、多重比較の補正の外にあると論文が書いています。探索的な解析は、たまたま偏った値が出る度合いが高くなります。
論文のどこ:論文の Results の Neuropathologic Outcomes の節と、Exploratory Analysis で始まる節です。探索的な解析を補正の外に置いたことは Methods の Statistical Analysis の節の終わりに書かれています
APOE という遺伝子の型で分けた解析も行われています。e4 という型を持っていない11,542人では、剖検で見たアルツハイマー病の変化が少ないという関連が見られましたが、e4 を持っている7,860人ではその関連は見られませんでした。一方で、生きているあいだの臨床の記録については、e4 を持っている人でも持っていない人でも、同じ向きの関連が報告されています。これらの詳しい数値は補足の表にあり、論文の本文には載っていません。
2つのデータの集まりで、出方が違う
動画では、認知症の診断についての0.61という数字を「人数の多い研究では」と断って紹介しました。断りが必要だったのは、もう一方のデータでは同じ評価項目の幅が1をまたいでいるからです。
改めて並べます。
- 人数の多いほう:0.61、幅は0.55から0.67、p<0.0001。使った人1,841人と、使っていない人17,561人
- 人数の少ないほう:0.667、幅は0.437から1.018、p=0.060。使った人91人と、使っていない人1,253人
点推定値は、0.61と0.667です。ほとんど同じところにあります。違うのは幅です。
この2つを見て「片方では関連があり、片方では無かった」と読むのは、正確ではありません。正確には、一方は幅が狭く1をまたがず、もう一方は幅が広く1をまたいだです。使った人の数は、1,841人と91人です。20分の1ほどになります(この割り算はこの記事のものです)。人数が少なくなれば幅は広がります。
論文自身も、人数の少ないほうのデータについては「標本が比較的小さく、これらの結果は探索的なものと考える」と限界の節に書いています。
なお、この0.667という値には注意が要ります。同じ評価項目の値が、論文の中に2か所、違う書き方で載っているからです。Table 3 では0.667(0.437から1.018)、p=0.060。本文の段落では0.66(0.437から1.02)、p=0.06です。幅と p 値は桁を減らした形になっていますが、点推定値は0.667を2桁にすると0.67で、本文の0.66とは一致しません。この記事は、桁が多く人数も同じ表から読み取れる Table 3 の値を使っています。
60歳より前に始めた人たち
この論文の本文と表に出てくる中でいちばん小さいオッズ比は、60歳より前に使い始めたと申告した人たちの0.30です。世間の見出しになるとしたら、ここでしょう。だから、丁寧に見ておきます。
探索的な解析です
論文の統計の節には、こう書かれています。副次的な評価項目(探索的な病理、画像、臨床の指標)については、それぞれのデータの集まりの中で、偽発見率という方法で多重比較の補正をかけた。そのうえで、いくつかの探索的な事後解析を NACC で行った。これらの解析は純粋に探索的で、主たる解析とは別のものなので、多重比較の補正には含めていない。
60歳より前に始めた人たちの解析は、この「多重比較の補正に含めていない」ほうに入ります。限界の節でも「探索的な部分集団解析」と書かれています。
たくさんの分け方を試せば、そのうちいくつかは偶然に小さい値が出ます。補正は、その分を織り込むための手続きです。補正の外にある数字は、補正の中にある数字と同じようには読めません。
幅は1をまたいでいます
値は0.30、幅は0.08から1.10、p 値は0.059です。
幅の広さを見てください。下は0.08、上は1.10です。オッズが10分の1を下回るほど小さかったかもしれないという側と、1をわずかに超えるほど大きかったかもしれないという側が、同じ幅の中に入っています。61人から出た推定なので、これだけ揺れます。
論文は、この結果について「示唆的な関連を表している」としたうえで、「統計的な有意には達しなかった」と書いています。限界の節でも、標本が小さいことが理由かもしれないとしたうえで、確定的な結論に至るにはさらなる研究が必要だ、と書いています。
人数が、2か所で違います
もう1つ。この部分集団の人数が、論文の中で2つ出てきます。結果の節では61人、限界の節では60人です。p 値の0.059は、どちらの箇所でも一致しています。
この記事では、結果の節の61人を使っています。
エストロゲンだけの薬が、いまの標準でない理由
動画では、この研究が調べたエストロゲンだけの薬と、いま使われている薬が違うことを、いちばん大事な限界として挙げました。短い時間では、その理由まで話せませんでした。ここで書きます。
論文の限界の節に、こう書かれています。
エストロゲン単独のホルモン療法は、子宮が残っている人には勧められない。子宮内膜の増殖症と、がんの危険があるためである。したがって、標準的な診療ではエストロゲンとプロゲステロンを合わせた療法が行われる。
子宮内膜というのは、子宮の内側の膜のことです。増殖症は、その組織が増えた状態を指す言葉です。
なお、この記事の前のほうでは「プロゲスチン」、ここでは「プロゲステロン」と書いています。これは論文自身の言い方をそのまま写したものです。論文は、方法の節で除外した併用療法を progestin、限界の節で標準的な診療として挙げた併用療法を progesterone と書いています。この2つの言葉の違いについての説明は、論文にはありません。
論文がここで書いているのは、この2つの危険があるためにエストロゲン単独は子宮が残っている人には勧められず、標準的な診療ではプロゲステロンを合わせた療法が行われる、というところまでです。なぜ合わせると違うのかという仕組みは、この論文には書かれていません。
論文がここで挙げている理由は、効き目についてのものではありません。子宮が残っている人にとっての、別の危険についてのものです。
そのうえで論文は、こう続けています。この研究の結果が最も直接に当てはまるのは、子宮を摘出する手術を受けていて、プロゲステロンを合わせないエストロゲンを処方されうる、少数の集団である。したがって、広いホルモン療法の使用者の集団への一般化は、大きく制限される。
ここで、読み違えやすいところが1つあります。
これは、この研究に参加していた人たちが子宮を取った人だった、という話ではありません。論文は同じ限界の節で、NACC も ADNI も子宮摘出の既往を系統的には集めておらず、この研究の参加者についてそのデータを正確に報告することはできない、と書いています。
ですから「当てはまるのは子宮を取った一部の人」というのは、結果をどこまで広げてよいかについての但し書きであって、参加者がそうだったと確かめた話ではありません。
論文の中で、そろっていないところ
この論文には、本文と表とで数字がそろっていない箇所が、いくつかあります。以下はすべて、この記事が論文の本文と表を並べて突き合わせたものです。どちらが正しいのか、なぜそうなったのかは、論文には書かれていません。ですから、ここで書くのは、そろっていないことまでです。この記事の見立てを書くときは、そのつど断ります。
1. 亡くなったときの年齢の、ばらつきの幅
要旨には、剖検のデータについて「薬を使った258人(死亡時年齢の平均81.9歳、標準偏差19.5)」と書かれています。
Table 1 の同じ欄は「81.9 ± 10.5[範囲55.3〜103.4]」です。平均は一致していますが、標準偏差が19.5と10.5で違います。
同じ表の、使っていない2,701人のほうは「82.2 ± 11.0[範囲51.2〜107.6]」で、要旨の「82.2、標準偏差11.0」と一致しています。
範囲が55.3歳から103.4歳であること、そして比べる相手の標準偏差が11.0であることから見ると、Table 1 側の10.5のほうが前後とつながります。この見立てはこの記事のものです。
2. 人数の少ないほうのデータで、薬を使った人の数
要旨には、そのデータについて「薬を使った110人と、使っていない1,948人」と書かれています。
Table 1 の同じ列の見出しは「MHT nonusers (N = 1,948)」と「MHT users (N = 112)」です。110人と112人で、2人違います。
さらに、結果の節の最初の段落には、そのデータの合計が2,058人と書かれています。1,948に110を足すと2,058です。Table 1 の1,948に112を足すと2,060です。
つまり、110とそろう箇所が2つ(要旨と、結果の節の合計2,058)、112と書いてある箇所が1つ(Table 1)です。この記事はどちらが正しいかを決められないので、この記事の図では、人数ではなくオッズ比の解析に入った人数(91人と1,253人、98人と1,324人)のほうを使っています。こちらは Table 3 に書かれているものです。
3. 60歳より前に始めた人の数
結果の節では61人、限界の節では60人です。p 値の0.059は、どちらの箇所でも一致しています。
4. オッズ比の書き方
人数の少ないほうのデータの、認知症の診断についてのオッズ比です。Table 3 は0.667(0.437から1.018)、p=0.060。本文の段落は0.66(0.437から1.02)、p=0.06。
幅と p 値は、桁を減らした形になっています。1.018は1.02、0.060は0.06です。ところが点推定値は、0.667を2桁にすると0.67で、本文の0.66とは一致しません。
点推定値を一方から、幅をもう一方から取ってしまうと、論文のどこにも無い数字ができあがります。この記事は Table 3 のほうにそろえています。
5. 記憶の検査の値
人数の少ないほうのデータの、記憶の検査(RAVLT)についてです。
本文の段落には、即時記憶がβ=0.336(p=0.002)、学習がβ=0.233(p=0.033)と書かれています。
Table 3 の同じ行は、即時記憶がβ=0.251(0.051から0.451)、p=0.0412。学習がβ=0.194(−0.014から0.402)、p=0.067です。
学習については、本文の段落では p 値が0.05を下回り、Table 3 では上回っています。どちらの数字がどの解析から出たものかは、論文に説明がありません。
なお、認知症の診断を受けていない人だけに絞った事後解析の値(即時記憶β=0.361、学習β=0.249)は、これとはまた別のものとして本文に書かれています。
6. 主要な評価項目が、何人から得られたのか
最後に1つ、人数の話です。
論文は、剖検の所見について「薬を使った258人、使っていない2,701人」と書いています。
一方、Table 2 の ABC スコアの欄には、4つの段階ごとの人数が並んでいます。使った人は30人、32人、39人、67人。足すと168人です。使っていない人は154人、262人、328人、765人。足すと1,509人です。
表に書かれている割合も、この人数から計算されています。たとえば「アルツハイマー病ではない」の使った人は30人で17.9%とありますが、30を168で割ると17.9%になります。154を1,509で割ると10.2%で、これも表の値と一致します。
つまり、この論文の主要な評価項目である ABC スコアが実際に得られたのは、168人と1,509人だったと、Table 2 からは読めます。地の文の258人と2,701人より、かなり少ない人数です。
方法の節には、ある解析でデータが欠けている人は、その解析からケース単位で外した、と書かれています。ただし論文は、この記述と ABC スコアの人数を結び付けて説明してはいません。ABC スコアが何人から得られたかを地の文で書いた箇所は、この記事が参照した本文にはありません。
この足し算は、この記事が Table 2 の数字から行ったものです。論文がこの合計を書いているわけではありません。
この研究では言えないこと
動画では限界を1つだけ挙げました。ここでは、論文が自分で書いている限界を含めて広げます。
この薬のおかげかどうかは、確かめられていません
要旨の最後の1文に、著者自身が「私たちの結果は因果に答えていない」と書いています。考察の中でも「この解析は観察に基づくものなので、ホルモン療法の使用と、臨床および剖検のアウトカムとのあいだの因果関係を突き止めることはできない」と書いています。結びでも、観察された関連の因果を評価するには前向きの試験が必要だ、としています。
なぜ確かめられないのか。くじ引きで分けていないからです。
論文は、この点を限界の節でさらに具体的に書いています。年齢、APOE の型、教育年数、人種、高血圧といった要因は調整した。しかし、測っていない要因や、正確には測れていない要因が結果に影響している可能性は残る。使った人と使わなかった人のあいだの違いは、次のようなものを反映しているかもしれない、と挙げられています。
- もともとの健康状態
- 医療へのアクセスと、医療とのかかわり方
- 生き延びたかどうかに関わる要因
思い出してください。Table 1 では、薬を使ったと申告した人のほうが、教育年数が長く、研究に長く通い、受診回数も多い集団でした。これらは、上に挙げられた3つと重なる方向の違いです。この重ね合わせは、この記事の見立てです。
この薬は、いま使われている薬と違います
この研究が調べたのは、エストロゲンだけを使う療法です。前の節で書いたとおり、子宮が残っている人には勧められないもので、標準的な診療ではプロゲステロンを合わせた薬が使われます。論文は、広い使用者の集団への一般化は大きく制限される、と書いています。
年齢も違います
論文は、いまの診療の実態と自分たちの標本を対比しています。いまの診療では、エストロゲンとプロゲストゲンを合わせた療法を、閉経のころ(多くは40代の後半から50代の前半)に始めることが多く、60歳より前に中止することが一般に勧められている、と書かれています。
これに対して、この研究の標本について、限界の節には「NACC で平均70.4歳のエストロゲン単独の使用者を含む」とあります。
この70.4歳という値については、少し注意が要ります。論文は、これが何時点の年齢なのかを書いていません。そして、近いところにある他の数字と一致しません。
- 方法の節には、開始年齢の平均は NACC で69.9歳、と書かれています
- Table 1 の「初回受診時の年齢」は、NACC の臨床データで薬を使った人が69.8歳です
- Table 1 の「初めてホルモン療法を使った年齢」は、NACC の臨床データで薬を使った人が71.0歳、剖検の記録がある人では75.9歳です
- Table 1 の「死亡時の年齢」は81.9歳です
70.4という値は、この中のどれとも一致しません。どの値に対応するのかは、論文に書かれていません。この突き合わせは、この記事が限界の節と方法の節と Table 1 を並べて行ったものです。
はっきりしているのは、考察の書き出しに書かれていることのほうです。そこには、この2つの集まりの女性たちは「平均して70歳を過ぎてから、ホルモン療法の使用を申告した」とあります。つまり、いま多くの人が始める年代とは、かなり離れた集団だということです。
いつから、どれだけ使っていたかは分かりません
論文は、使用期間や、研究に参加する前の使用歴についての情報が得られなかった、と書いています。そのため、生涯にわたるエストロゲンの曝露と認知症のアウトカムとの関連としては、この結果を一般化できないとしています。
正確な開始時期も確認できない、とも書かれています。そのうえで、剖検で調べる時点のおよそ7年前に「いま使っている」という申告があったので、療法の影響が出るとすれば、それを見るだけの時間はあった、と添えています。
塗り薬は入っていません
塗り薬は、この研究のホルモン療法の定義から外されています。NACC ではその使用の情報が得られません。論文は、低用量の塗り薬が全身に吸収される量はわずかなので、この限界が結果に意味のある偏りを与えたとは考えにくい、と書いています。
測ったのは、脳の所見と診断です
この研究が測ったのは、亡くなったあとの脳の所見、血液や髄液や画像で測った指標、通院中に付いた診断や症状の段階、そして記憶の検査の点数です。
このうち主要な評価項目は、剖検の ABC スコアです。論文は、これを剖検でアルツハイマー病の病理を確かめるための基準として受け入れられているものだと説明しています。ただし、これは亡くなったあとの脳の状態であって、生きているあいだにどう過ごしたかそのものではありません。
探索的な数字が多く含まれます
薬の種類で分けた結果、APOE の型で分けた結果、60歳より前に始めた人の結果は、すべて探索的な事後解析で、多重比較の補正の外にあります。論文自身がそう書いています。
著者は、どう結んでいるか
限界を並べたあとで、著者はこう書いています。これらの限界はあるものの、エストロゲン単独の療法に後年さらされたことと、アルツハイマー病に関わる剖検および臨床のアウトカムとのあいだに、関連があるという証拠を示している。そして、観察された関連の因果を評価するには、前向きの試験が必要である、と。
要旨の最後の1文は、この長い限界の並びを、たった1つの文に畳んだものです。前半に「因果には答えていない」と「一般化できる範囲は限られる」が入り、後半に「守る働きを示唆する」が来ます。
繰り返しますが、これは珍しい書き方ではありません。著者は限界の節で、ここまで見てきたとおり、ずいぶん丁寧に書いています。
ただ、論文を最後まで読まず、要旨だけを読む人もいます。そして1つの文の中に両方が入っているとき、どちらを持ち帰るかは、読む側に委ねられます。
元の論文のどこを見ればよいか
元の論文は、次のとおりです。
Bruno J ら. Association Between Menopausal Hormone Therapy and Alzheimer Disease Neuropathology. Neurology. 2026;107:e218413.
DOI のリンクはこちらです。https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000218413
この記事で扱ったことが、論文のどこにあるかを並べておきます。
- 要旨の最後の1文:Abstract の Discussion の段落。最後の文です
- 後ろ向きのコホート研究であること、2つのデータの集まりと収集期間:Methods の Participants and Study Design の節
- 誰が入り、誰が外れたか(併用療法の人と塗り薬の扱い):Methods の Participant Assessment and Inclusion Criteria の節。絞り込みの流れ図は Fig. 1
- 主要な評価項目(ABC スコア)の中身:Methods の Neuropathologic Outcomes の節
- 共変量の一覧と、2つのデータで共変量が違うこと:Methods の Statistical Analysis の節の前半
- 逆確率重み付けのやり方:同じ節の中ほど
- どこまでが多重比較の補正の中で、どこからが探索的なのか:同じ節の終わりのほう
- 2つのグループの背景の違い(年齢、教育年数、人種、通院期間、受診回数、死亡時年齢):Table 1
- 剖検の所見の結果:Table 2 の上半分と Fig. 2A。文章では Results の Neuropathologic Outcomes の節
- ABC スコアの段階ごとの人数:Table 2 の最初の4行
- オッズ比が「より高い段階にいるオッズ」であること:Table 2 の注
- 血液と髄液の指標:Table 2 の下半分と Fig. 2B。文章では Results の Molecular Imaging and Fluid Biomarker Outcomes の節
- 認知症の診断と、記憶や生活機能の低下の症状:Table 3 の上2行と Fig. 3A。文章では Results の Clinical Outcomes の節
- 記憶の検査(RAVLT):Table 3 の下3行と、Results の Clinical Outcomes の節の後半
- 薬の種類で分けた結果、APOE で分けた結果、60歳より前に始めた61人:Results の Exploratory Analysis で始まる節。詳しい表は補足の資料
- 子宮内膜の増殖症とがんの危険、子宮摘出の既往が集められていないこと、70.4歳、いまの診療との対比:Discussion の後半、Although the use of 2 independent large-scale studies で始まる段落の次の段落
- 測っていない要因についての限界:同じ段落の書き出し
- 前向きの試験が必要だという結び:Discussion の最後の段落
- 数字がそろっていない箇所:要旨の Results の段落と Table 1 を並べて読んでください。認知症の診断については Table 3 と Results の Clinical Outcomes の節を、60歳前の人数については Results の Exploratory Analysis の節と Discussion の限界の段落を並べて読んでください
見方を練習するために
この回の芯は、一つです。
関連が出たことと、その薬のおかげだと言えることは、別だということ。
この論文は、そこをきちんと書いています。要旨の最後の1文に、因果には答えていない、と書いてあります。限界の節では、使った人と使わなかった人がもともと違う集団であることを、具体例まで挙げて書いています。
それでも同じ1つの文の中に、守る働きを示唆する、という言葉が置かれています。そして、どちらを持ち帰るかは、読む側に委ねられています。
だから、練習するのは難しいことではありません。結論の文を読んだら、「因果には答えていない」に当たる断りが書かれているかを探す。あったら、前向きな言葉のほうは、確かめられたことではなく仮説として受け取る。それだけです。
この見方に一番近い本として、『「原因と結果」の経済学』を挙げておきます。相関と因果の違いそのものを扱った本です。二つのことが一緒に動いて見えるとき、片方がもう片方を起こしているのか、それとも両方を起こしている第三のものがあるのか。その見分け方を、いくつもの例で追っていきます。この記事のページでは、この書名にアフィリエイトのリンクを付けています。
最後にもう一度書いておきます。この記事は、薬を始めることも、やめることも勧めていません。ここで扱ったのは、一つの論文の中にある数字の幅と、その読み方だけです。
元の論文
Bruno J ら. Neurology. 2026.
https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000218413
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