動画で話したこと

動画では、食べる時間を1日のうちの短い幅に縮める方法について、20件のランダム化比較試験をまとめた論文を紹介しました。大人1242人分です。

先に、いちばん大事なところを3つ書きます。

1つめ。減っていたのは、脂肪だけではありませんでした。体重と脂肪の重さが減る側に動くのと同時に、「脂肪以外の重さ」も減る側に動いていました。

2つめ。その「脂肪以外の重さ」は、筋肉を測った数字ではありません。測られているのは、名前のとおり、脂肪ではない部分をまとめた重さです。この論文には、そこに何が入るのかの定義が書かれていません。ですから、減った分のどれだけが筋肉だったのかは、この論文からは分かりません。これがこの回の主な限界です。

3つめ。1.39キロは「終わりの体重の差」ではありません。食べる時間を縮めたグループの前後の変化と、比べたグループの前後の変化の、その差です。しかも、4週間から52週間かけたグループ全体の平均の差です。一人ひとりがこれだけ減るという数字ではありません。

動画で話せたのは、だいたいここまででした。

この記事では、そこから先に進みます。誰を、どう分けて、何を、いつ測ったのか。1.39キロや0.58キロという数字が、どういう計算から出てきたのか。項目ごとに何件の試験が入っているのか。そして、論文自身が書いている限界と、論文の中で数字が食い違っている3か所を、並べて書きます。

先に2つ、断っておきます。

この記事は、やせ方の助言ではありません。この論文が組み合わせの相手として扱っているのは、摂るエネルギーを減らすことだけです。運動を組み合わせた試験は、本文を読む段階で13件が除かれています。ですからこの研究は、運動を足したらどうなるかには答えていません。

そして、この論文の数字は「食べる時間を縮めるとこうなる」という予測ではありません。20件の試験のまとめた値です。参加した人たちは、太りぎみか肥満の人がほとんどでした。

誰を、どう分けて、何を、いつ測ったか

これは「研究のまとめ」です

この論文そのものは、人に何かをした研究ではありません。すでに世の中に出ている論文を集めて、数字を1つにまとめた系統的レビューとメタ解析です。

探し方と報告の形は、PRISMA という系統的レビューの指針の最新版に沿っていると書かれています。やることを先に登録する仕組み(PROSPERO)にも、CRD42022370215 という番号で登録されています。あとから都合のよい結果だけを選びにくくするための手続きです。

探した先は5つです。PubMed、Cochrane Library、EMBASE、Web of Science、Scopus。2024年7月より前に出た論文を対象にしています。検索語の一覧は論文に載っていて、見つけた論文の参考文献をたどる手作業も加えたと書かれています。

ここで、1つ目の大事な点です。もとになった20件は、すべてくじ引きで割り当てたランダム化比較試験です。参加者を自分で選ばせたのではなく、どちらのやり方になるかをくじ引きで決めています。ですから、ただ観察しただけの研究より、原因と結果の向きは言いやすい形になっています。

とはいえ、まとめ方そのものに弱いところがあります。それは下の「この研究では言えないこと」で書きます。

4006件から20件まで、どう絞ったか

はじめに集まったのは4006件と書かれています。内訳は PubMed が825件、Cochrane Library が1127件、EMBASE が358件、Web of Science が652件、Scopus が532件。同じ論文が複数の検索先から出てくるので、この時点では重複を含んでいます。

ここで、内訳を足してみてください。825+1127+358+652+532=3494で、4006になりません。そして3494から重複した1612件を引くと、次の段の1882件にぴったり合います。合っていないのは4006のほうだけ、と読めます。

重複した1612件を取り除いて、1882件になりました。この1882件を、題と要旨だけで選り分けます。ここで1789件が外れました。動物の研究、総説、レター、学会の要旨、英語でないものなどです。

残った93件は、本文まで取り寄せて条件を1つずつ確かめています。ここで73件が外れました。いちばん多い理由は、比べる相手がない、または適切でないもので25件。次がくじ引きで割り当てていないもので18件です。

最後に残ったのが20件です。この20件・1242人が、以下に出てくるすべての数字のもとになっています。ただし、どの項目も20件そろって報告しているわけではありません。項目ごとの件数は、あとで出てきます。

5つの検索先から集まった論文4006人
重複1612件を除いて、題と要旨を見た論文1882人
本文まで読んで条件を確かめた論文93人
まとめに残ったランダム化比較試験20人

1段目は、論文が書いたとおりの4006件です。ただし、同じ段落にある検索先ごとの件数を足すと3494件で、4006件になりません。重複1612件を引いて2段目の1882件になるのは、3494件のほうです。最後に残った20件は、すべてくじ引きで割り当てたランダム化比較試験です。本文まで読んだ93件のうち73件が除かれた理由は、くじ引きで割り当てていないもの18件、比べる相手がない、または適切でないもの25件、解析に足るデータがないもの9件、体つきと体の中身の測定がないもの8件、そして運動を組み合わせた試験13件です。運動を足したらどうなるかは、この研究の範囲の外です。

論文のどこ:論文の Fig. 1(絞り込みの流れ図)と、Results の Systematic search findings の節

採り入れた条件と、除いた条件

どんな研究を入れるかは、先に決められています。採り入れの条件は6つです。

  • くじ引きで割り当てたランダム化比較試験であること
  • 参加者が18歳より上の大人であること。健康の状態は問わない
  • 食べない時間が1日12時間以上で、それを週6日以上やっていること
  • 体重、BMI、脂肪の重さ、脂肪以外の重さ、腹囲のうち、少なくとも1つを報告していること
  • 比べる相手が適切であること。具体的には、食事に制限をつけないグループか、摂るエネルギーを減らすグループ
  • 査読を受けて、索引のある雑誌に載っていること

除いた条件は5つです。

  • 運動を組み合わせた試験
  • ほかの断食のやり方(間を1日おきにするもの、期間を区切って行うもの)
  • ラマダン中の断食
  • 断食の期間が3週間に届かないもの
  • データが足りないもの、英語でないもの

ここが、この論文の性格を決めています。比べられているのは、食べる時間を縮めること単独か、それに摂るエネルギーを減らすことを足した場合の2通りだけです。運動を組み合わせた試験は、はじめから外されています。ですからこの研究は、運動を足したらどうなるかには答えていません。

2通りの比べ方があります

内訳の解析が2つあります。ここを区別しないと、同じ項目に数字が2つ出てくる理由が分からなくなります。

  • 縮めるだけのグループは、食事に制限をつけないグループと比べられています
  • 食べる時間を縮めて、さらに摂るエネルギーも減らしたグループは、摂るエネルギーを減らすだけのグループと比べられています

つまり、2つの内訳は、比べている相手が違います。この記事に出てくる内訳の数字を読むときは、毎回この2行を思い出してください。

参加したのは、どんな人たちか

20件・1242人の中身です。

国は、米国が8件、中国が5件、ブラジルが2件、トルコが2件、イランが1件、ノルウェーが1件、スイスが1件です。

性別は、女性だけの試験が4件、男女を入れた試験が15件、性別を書いていない試験が1件です。

年齢は、試験ごとの平均でおよそ20歳から56歳の幅にあります。採り入れの条件は「18歳より上の大人」で、上限は書かれていません。ただし本文の文章は「参加者の年齢は21歳から49歳の幅だった」と書いていて、採り入れた20件の一覧と食い違います。この点は、下の「論文の中で、数字が3か所食い違っています」で扱います。

健康の状態の内訳は、こうなっています。

  • 健康な人を調べた試験:4件
  • 太りぎみか肥満の人を調べた試験:11件
  • メタボリックシンドロームの人を調べた試験:2件
  • 2型糖尿病の人を調べた試験:2件
  • 脂肪肝の人を調べた試験:1件

標準体重の健康な人を調べた試験は、20件のうち4件です。この4件のもとの BMI は、表に載っている値で20.32から24.4の範囲にあります。4件の参加者を足すと168人で、1242人の約13.5%にあたります。残りの大半は、太りぎみか肥満の人、または代謝や肝臓に問題がある人です。

著者自身も限界の節で、解析に入った参加者の大半が太りぎみか肥満の人なので、ほかの病気がある人(がんや心臓・血管の病気など)には当てはまらないかもしれないと書いています。

やり方の幅

食べない時間は、12時間から20時間の幅がありました。食べてよい時間のほうで言えば、4時間から12時間の幅です。

期間は4週間から52週間です。20件のうち16件は8週間以上やっています。

20件のうち3件は、食べる時間を縮めるグループを2つ持っていて、比べる相手が1つしかありません。1件は食べる時間を4時間にするグループと6時間にするグループ、1件は早い時間に食べるグループと遅い時間に食べるグループ、1件は早い時間に食べるグループと昼に食べるグループです。こういう場合、比べる相手の人数をそのまま2回使うと、同じ人を二重に数えてしまいます。この論文は、比べる相手の人数を半分に割って使ったと書いています。

何で測ったか

体の中身の測り方は、試験によって違います。

  • DEXA(X線を使って体の中身を分ける装置):12件
  • BIA(体に弱い電気を流して測る装置):7件
  • 体重計だけ:1件

どの試験がどれを使ったかの一覧は、補足の資料にあります。論文の本文に書かれているのは、この件数だけです。

つまり、脂肪以外の重さという1つの数字に、3通りの測り方の結果が混ざっています。著者も限界の節で、体の中身の測り方の違いを扱えていないと書いています。

「割り付けどおりの比較」なのかどうか

介入研究の読み方では、くじ引きで決まったグループのまま比べたのか(割り付けどおりの比較)、実際にやり切った人だけで比べたのか(実際に受けたかで分けた比較)を区別します。前者のほうが、途中でやめた人の偏りを持ち込みにくい形です。

この論文には、20件それぞれがどちらで比べていたのかは書かれていません。この論文がしたのは、それぞれの試験の報告から、前と後の平均(または変化の平均)を取り出して、1つにまとめることです。変化の平均が書かれていない試験については、前後の平均と標準偏差から、決まった式で変化を計算したと書かれています。

ですから、割り付けどおりの比較かどうかは、この論文からは読み取れません。もとの20件を1つずつ見に行くしかありません。

この数字は、何を指しているか

1.39キロは、4つの数字の引き算です

この論文の結果は、すべて重みづけ平均差という形で表されています。英語では weighted mean difference、略して WMD です。

論文の方法の節に、計算の中身がはっきり書かれています。使ったのは、介入側と比べる側の、それぞれの前後の測定の差です。

言い換えると、こういう計算です。

  1. 食べる時間を縮めたグループの、終わりの体重から始めの体重を引く
  2. 比べたグループの、終わりの体重から始めの体重を引く
  3. 1から2を引く

この3番目が、−1.39キロです。

ですから、−1.39キロは「食べる時間を縮めたグループの体重が、比べたグループより1.39キロ軽かった」という意味ではありません。「減り方が1.39キロ大きかった」という意味です。

「重みづけ」が付いているのは、20件の試験を単純に平均していないからです。人数が多く、ばらつきの小さい試験のほうが、まとめた値に強く効きます。

単位は、そのままのキロです

この論文の数字は、倍率ではありません。

  • 体重、脂肪の重さ、脂肪以外の重さ:キロ
  • BMI:キロ毎平方メートル
  • 腹囲:センチ
  • 脂肪の割合:パーセント

どれも引き算の指標です。「○倍」「○%増えた」という形の数字は、この論文がまとめた結果の数字には1つも出てきません(考察には、ほかの研究の数字として割合の変化が引かれています)。ですから、相対リスクを絶対リスクに直すような換算も、ここでは出てきません。読むときに見るべき「差がない位置」は、すべて0です。

幅は何を指しているか

数字の横に書いてある「−1.81〜−0.98」は、95%信頼区間です。

同じやり方の研究を何度もくり返したとき、こうして作った幅の中に本当の値が入っているのが100回のうち95回くらい、という性質を持つ幅です。幅が広いほど、まとめた値の置きどころが定まっていないことになります。

読み方の見当として、幅が0をまたいでいるかどうかを見ます。またいでいなければ、この人数では差がはっきりした向きです。またいでいれば、差がはっきりしなかった向きです。

ただし、またいでいるからといって「差がない」と確かめられたわけではありません。人数が足りなくて見えなかっただけ、ということもあります。この区別は、あとで脂肪の割合の図を見るときに効いてきます。

一人ひとりの数字ではありません

くり返しになりますが、ここが一番誤解されやすいところです。

−1.39キロは、4週間から52週間かけた、グループ全体の平均の差です。

  • 4週間の試験と52週間の試験が、同じ1つの値にまとめられています。だから「何週間でこうなる」とは読めません
  • グループの平均なので、同じグループの中でも、よく減った人とほとんど変わらなかった人がいます
  • 自分がやったらこうなる、という予測ではありません

3つの数字を、足したり引いたりできません

よくやってしまいそうな計算があるので、先に書いておきます。

体重の減りの差が1.39キロ、脂肪の減りの差が1.00キロ、脂肪以外の減りの差が0.57キロ。足すと1.57キロで、体重の1.39キロを超えてしまいます。

これは計算が間違っているのではなく、3つが別々のまとまりから別々に計算されているからです。

  • 体重を報告したのは19試験、21グループ
  • 脂肪の重さを報告したのは17試験、20グループ、977人(介入側520人、比べた側457人)
  • 脂肪以外の重さを報告したのは16試験、895人

参加している試験が違います。ですから、この3つを足し引きして「残りはどこに行ったのか」を計算することはできません。

1242人は、20件の合計の人数です。項目ごとの解析の人数ではありません。

I² は、ばらつきを表す数字です

結果の横に、I² という数字が出てきます。これは、試験のあいだで結果がどれだけ違っているかを表す数字です。

この論文は、25%、50%、75% をそれぞれ低い・中くらい・高いの目安にしたと書いています。75% から上が「高い」です。

ばらつきが統計的に有意なときはランダム効果モデル、そうでないときは固定効果モデルを使うと書かれています。体重については、ランダム効果モデルを使ったと本文に明記されています。

この回で大事なのは、項目によって I² が大きく違うことです。体重は78%で高く、脂肪以外の重さは9%です。同じ論文の中でも、まとまり方がまったく違います。

結果を、幅で見る

体重と脂肪の重さ

まず、20件をまとめた値です。

体重と脂肪の重さ、減り方の差(キロ)とその幅

まず縦の線を見てください。0のところに引いてあります。引き算の指標なので、ここが差がない位置です。線より左なら、食べる時間を縮めたグループのほうが多く減った向きです。

1つめ、体重です。中心は −1.39キロ、幅は −1.81から −0.98。幅は0をまたいでいません。ただし幅の端と端で0.8キロ以上離れています。

2つめ、脂肪の重さです。中心は −1.00キロ、幅は −1.23から −0.77。こちらも0をまたいでいません。幅は体重より狭いです。

2つを見比べてください。中心の値は体重のほうが大きいですが、入っている試験の数が違います(19件と17件)。同じ人たちの体重と脂肪を同時に追いかけた数字ではないので、1.39から1.00を引いて「残りが脂肪以外の分」と考えることはできません。

そして、この2つは試験のあいだのばらつきもかなり違います。体重は78パーセントで、この論文の目安では高いほうです。試験によって結果がかなり違っていた、という意味になります。脂肪の重さは14パーセントで、まとまり方が違います。

体重の減りの差(19試験)-1.39(-1.81 〜 -0.98)
脂肪の重さの減りの差(17試験)-1.0(-1.23 〜 -0.77)
差がない位置0

単位はキロです。幅は95パーセント信頼区間で、0が差がない位置です。どちらの値も、食べる時間を縮めたグループの前後の変化と、比べたグループの前後の変化の差です。終わりの値の差ではありません。4週間から52週間かけたグループ全体の平均の差で、一人ひとりがこれだけ減るという数字ではありません。体重を報告したのは19試験・21グループ、脂肪の重さを報告したのは17試験・20グループ・977人です。入っている試験が違うので、2つの値を足したり引いたりはできません。試験のあいだのばらつきは、体重が78パーセント、脂肪の重さが14パーセントです。

論文のどこ:論文の Fig. 3(体重)と Fig. 4(脂肪の重さ)。文章では Results の、体重を扱った節と脂肪の重さを扱った節

内訳に分けると、こうなります。体重で見てみましょう。

体重の減りの差を、2通りの比べ方に分けたもの(キロ)

上の行は、食べる時間を縮めるだけのグループと、食事に制限をつけないグループの差です。中心は −1.59キロ、幅は −2.02から −1.15。0をまたいでいません。

下の行は、食べる時間を縮めてさらに摂るエネルギーも減らしたグループと、摂るエネルギーを減らすだけのグループの差です。中心は −0.94キロ、幅は −1.58から −0.31。こちらも0をまたいでいません。

ここで2つの中心の値を見比べて「縮めるだけのほうが効く」と読みたくなります。ですが、比べた相手が違います。上は何も制限しない人たちとの差、下はすでにエネルギーを減らしている人たちとの差です。土台が違うので、1.59と0.94の大小をそのまま読み比べることはできません。

そして2つの幅は、かなり重なっています。論文自身も、この2つの内訳のあいだに統計的な差はなかったと書いています。結論の節の言い方は、食べる時間を縮めることにエネルギーを減らすことを足しても、体重の減りに上乗せの得はなかった、というものです。

縮めるだけ 対 制限をつけない-1.59(-2.02 〜 -1.15)
縮める+エネルギーを減らす 対 エネルギーを減らすだけ-0.94(-1.58 〜 -0.31)
差がない位置0

単位はキロです。幅は95パーセント信頼区間で、0が差がない位置です。2本は比べた相手が違います。上の行は、食べる時間を縮めるだけのグループと、食事に制限をつけないグループの差です。下の行は、食べる時間を縮めてさらに摂るエネルギーも減らしたグループと、摂るエネルギーを減らすだけのグループの差です。比べた相手が違うので、中心の値の大小をそのまま読み比べることはできません。論文は、この2つの内訳のあいだに統計的な差はなかったと書いています。

論文のどこ:論文の Fig. 3 の、2つの内訳の行。文章では Results の体重を扱った節の後半と、Conclusions の節

脂肪の重さの内訳も、本文に書かれています。食べる時間を縮めるだけのほうが −0.93キロ(幅は −1.22から −0.63)、組み合わせたほうが −1.13キロ(幅は −1.50から −0.75)です。こちらも、論文は内訳のあいだに差はなかったと書いています。

脂肪以外の重さ。ここがこの回の芯です

次が、動画でいちばん時間を使ったところです。

その前に1つ、はっきり書いておきます。脂肪以外の重さの「全体の値」は −0.57キロで、試験のあいだのばらつきは9%。これは本文に書かれています。ただし、この全体の値には95%信頼区間が書かれていません。ほかの項目はすべて幅が併記されているのに、ここだけ幅がありません。ですから、この記事では全体の −0.57キロを図にしていません。幅を自分で作ることもしません。

幅が書かれているのは、内訳の2つです。

脂肪以外の重さの減り方の差(キロ)とその幅

0の線が、差がない位置です。この項目を報告したのは16試験、895人です。体重の19試験、脂肪の17試験とは、入っている試験が違います。

上の行は、食べる時間を縮めるだけのグループと、食事に制限をつけないグループの差です。中心は −0.58キロ、幅は −0.81から −0.36。0をまたいでいません。

下の行は、食べる時間を縮めてさらに摂るエネルギーも減らしたグループと、摂るエネルギーを減らすだけのグループの差です。中心は −0.56キロ、幅は −0.81から −0.31。こちらも0をまたいでいません。

つまり、どちらの比べ方でも、脂肪以外の重さは減る側に動いていました。比べた相手が違うので、0.58と0.56の大小をそのまま読み比べることはできません。ただし論文自身は、この2つを比べて差はなかったと書き、結論の節では「どちらも同じように減った」という言い方をしています。

この項目のばらつきは9パーセントで、この論文の中ではいちばん小さいほうです。体重の78パーセントとは対照的で、試験のあいだの差が小さい結果でした。

そして、ここがこの回の芯です。この図が見せているのは「脂肪以外の重さ」が減る側に動いたことまでです。その減りのうち、どれだけが筋肉だったのかは、この指標では分けられません。

縮めるだけ 対 制限をつけない-0.58(-0.81 〜 -0.36)
縮める+エネルギーを減らす 対 エネルギーを減らすだけ-0.56(-0.81 〜 -0.31)
差がない位置0

単位はキロです。幅は95パーセント信頼区間で、0が差がない位置です。2本は比べた相手が違います。上の行は、食べる時間を縮めるだけのグループと、食事に制限をつけないグループの差です。下の行は、食べる時間を縮めてさらに摂るエネルギーも減らしたグループと、摂るエネルギーを減らすだけのグループの差です。比べた相手が違うので、中心の値の大小をそのまま読み比べることはできません。この項目を報告したのは16試験・895人で、試験のあいだのばらつきは9パーセントです。16試験をまとめた全体の値は −0.57キロと本文に書かれていますが、その値には95パーセント信頼区間が併記されていないため、この図には入れていません。

論文のどこ:論文の Fig. 6 の、2つの内訳の行。文章では Results の、脂肪以外の重さを扱った節

脂肪の割合は、内訳に分けるとはっきりしませんでした

もう1つ、動画では出せなかった項目があります。脂肪の割合(パーセント)です。

ここは、まとめた値と内訳で結論が変わります。論文の側も言い方が揺れています。この項目を扱った節の題は「効果がなかった」という形ですが、考察の最初の段落では、まとめた値を含めて「有意に減った」と書かれています。

読み方の練習になるところなので、3本を1つの図に並べます。

脂肪の割合の変化(パーセントポイント)とその幅

0の線が、差がない位置です。この項目を報告したのは13試験です。単位はパーセントポイントなので、キロの図とは別にしています。

いちばん上が、13試験をまとめた値です。中心は −0.60で、幅は −1.13から −0.07。幅の右端が −0.07で、かろうじて0に届いていません。

中の行が、食べる時間を縮めるだけのグループと、食事に制限をつけないグループの差です。中心は −0.69で、幅は −1.46から0.08。幅が0をまたいでいます。

下の行が、食べる時間を縮めてさらに摂るエネルギーも減らしたグループと、摂るエネルギーを減らすだけのグループの差です。中心は −0.50で、幅は −1.34から0.35。こちらも0をまたいでいます。

まとめた値は0をまたがず、内訳に分けるとどちらも0をまたぎました。内訳に分けると1本に入る試験の数が減るので、幅が広がります。これは「内訳にすると効果が消えた」のではなく、「分けた人数では、どちらの向きかをはっきりさせられなかった」という読み方になります。

そして、この項目のばらつきは87パーセントです。この論文の目安で高いほうにあたります。まとめた値の −0.60を、そのまま1つの代表値として受け取れる形ではありません。

論文は、この割合が変わらなかったことについて、脂肪以外の重さが減ったためかもしれないという見立てを書いています。割合の分母は体の重さ全体なので、脂肪が減っても分母も減れば、割合は動きにくくなる、という筋立てです。これは著者が可能性として挙げたもので、確かめられたことではありません。

13試験をまとめた値-0.6(-1.13 〜 -0.07)
縮めるだけ 対 制限をつけない-0.69(-1.46 〜 0.08)
縮める+エネルギーを減らす 対 エネルギーを減らすだけ-0.5(-1.34 〜 0.35)
差がない位置0

単位はパーセントポイントです。体重や脂肪の重さと単位が違うので、キロの図とは分けています。幅は95パーセント信頼区間で、0が差がない位置です。いちばん上は13試験をまとめた値、下の2本は内訳です。下の2本は比べた相手が違います。中の行は食事に制限をつけないグループとの差、下の行は摂るエネルギーを減らすだけのグループとの差です。上の行と下の2本も、まとめ方が違うので中心の値をそのまま引き算することはできません。試験のあいだのばらつきは87パーセントで、この論文の目安では高いほうです。

論文のどこ:論文の Fig. 5。文章では Results の、脂肪の割合を扱った節

BMI と腹囲

図にはしていませんが、本文にはもう2つの項目があります。単位が違うので、上の図とは並べられません。

  • BMI:13試験・771人をまとめた値が −0.54 キロ毎平方メートル(幅は −0.78から −0.29)。試験のあいだのばらつきは89%。内訳は、縮めるだけが −0.63(幅は −0.95から −0.30)、組み合わせが −0.42(幅は −0.78から −0.07)
  • 腹囲:11試験・703人をまとめた値が −2.19センチ(幅は −2.60から −1.77)。ばらつきは39%。内訳は、縮めるだけが −2.11センチ(幅は −3.35から −0.86)、組み合わせが −2.20センチ(幅は −2.64から −1.75)

BMI のばらつきが89%というところに注目してください。この論文の目安では、かなり高いほうです。まとめた値を1つの代表として読むには無理がある形です。

論文自身の言い方

ここまでの結果を、著者はどうまとめているか。考察の最初の段落に、こう書かれています。

食べる時間を縮めることを単独で行うこと、またはエネルギーを減らすことと組み合わせて行うことは、体重の減りと脂肪の減りには役立つが、脂肪以外の重さを保つことには役立たない。そして、2通りの内訳のあいだには差がなかった。

結論の節では、もっとはっきり書かれています。縮めるだけでも、エネルギーを減らすことと組み合わせても、脂肪以外の重さは同じように減った。そして、組み合わせても体重の減りに上乗せの得はなかった。

動画では「0.58と0.56の大小をそのまま読み比べることはできません」までで止めました。ここは付け足しておきます。比べた相手が違うので読み手が大小を読み比べることはできませんが、論文自身は内訳どうしを比べていて、その答えは「差はなかった」です。

もう1つ、著者が書いていることがあります。脂肪以外の重さが減ったことは、体の中身への効き方として気になるところである。そして、この結果は、脂肪以外の重さが変わらなかったとした先行のまとめとは違っている、と。

著者は、なぜ脂肪以外の重さが減ったのかについて、摂るエネルギーが減ったこと、たんぱく質の摂り方の違い、消費の変化が関わっているかもしれないと書いています。ただし、そのすぐあとに「これはまだ確かめられていない」と続けています。

なお、この段落には、エネルギーを減らす介入で脂肪以外の重さを保つには十分なたんぱく質が大事だと指摘されている、という記述もあります。これはほかの文献から引用された話で、この研究が確かめたことではありません。この論文は、たんぱく質の摂り方を比べていません。

この研究では言えないこと

主な限界:測ったのは「脂肪以外の重さ」です

この回の主な限界は、評価項目です。

知りたいのは「筋肉が落ちたのか」です。ですが測られているのは、脂肪以外の重さという手前の目安です。

ここで大事な事実があります。この論文の本文のどこにも、脂肪以外の重さが何を含むのかの定義が書かれていません。方法の節にも、結果にも、考察にもありません。本文は、どこでも fat-free mass という語をそのまま使っています。

分かるのは、名前そのものの意味だけです。脂肪ではない部分をまとめた重さ、ということです。脂肪以外のどれが減ってこの数字になったのかは、この論文からは分かりません。

ですから、こう言えます。

  • 言えること:食べる時間を縮めたグループは、比べたグループより、脂肪以外の重さが減る側に動いていた
  • 言えないこと:その減りが筋肉の減りだったのか

著者自身も、限界の節で、この研究で見られた脂肪以外の重さの変化はさらに確かめる必要があると書いています。「脂肪以外の重さを保つことが大切であることを踏まえると」という前置きつきです。

逆向きの読み間違いにも注意してください。この論文は「筋肉は減っていない」とも言っていません。筋肉だけを取り出して測っていないので、どちらとも言えないのです。

補足の限界:試験によって結果がかなり違っていました

もう1つの限界が、試験のあいだのばらつきです。

  • 体重:78%
  • 脂肪の割合:87%
  • BMI:89%
  • 腹囲:39%
  • 脂肪の重さ:14%
  • 脂肪以外の重さ:9%

この論文の目安では、75%から上が「高い」です。体重、脂肪の割合、BMI の3つは、その目安を超えています。試験によって結果がかなり違っていた、という意味です。

ばらつきが大きいとき、まとめた1つの値は「だいたいこのくらい」の代表として読みにくくなります。食べない時間が12時間の試験と20時間の試験、4週間の試験と52週間の試験、標準体重の人の試験と肥満の人の試験が、同じ1つの値にまとめられていることを思い出してください。

一方で、この回の芯である脂肪以外の重さは9%です。試験のあいだの差が小さい結果でした。これは「一致が証明された」という意味ではありませんが、少なくとも体重とは様子が違います。

参加者に、どちらのやり方かを隠せません

20件はすべてくじ引きで割り当てた試験です。ですが、食べる時間を変える介入なので、参加者も実施者も、自分がどちらのやり方かを知っています。

論文も、介入の性質から参加者と実施者を盲検にできないとはっきり書いています。その結果が、偏りの評価に出ています。この論文は Cochrane の RoB2 という道具で、5つの領域から偏りを評価し、そのうえで全体の判定を出しています。

  • 割り付けのしかた:高い危険ありはなし。気になる点が3件
  • 意図した介入からのずれ:高い危険ありが12件。気になる点が8件。理由は、盲検にできないこと
  • 結果のデータの欠け:気になる点が10件、高い危険ありが4件
  • 結果の測り方:高い危険ありが4件
  • 報告する結果の選び方:気になる点が5件、高い危険ありが1件
  • 全体の偏り:高い危険ありはなし。ただし半数の試験に気になる点

20件のうち12件が「意図した介入からのずれ」で高い危険ありと判定されているのは、小さい話ではありません。自分がどちらのやり方かを知っていると、食べる量や行動が、割り付けられたやり方の中身とは別のところで変わりうるからです。

対象が限られています

もう一度書きます。標準体重の健康な人を調べた試験は、20件のうち4件、168人です。全体の約13.5%です。

著者も、解析に入った参加者の大半が太りぎみか肥満の人なので、ほかの病気がある人(がんや心臓・血管の病気など)には当てはまらないかもしれないと書いています。がんと心臓・血管の病気は、著者が挙げた例です。この20件には、2型糖尿病の試験が2件、脂肪肝の試験が1件、メタボリックシンドロームの試験が2件(うち1件は、その構成要素が1つある人)入っていますが、治療を受けている人に当てはまるかどうかは、この論文からは分かりません。

年齢についても、気をつける点があります。本文は「参加者の年齢は21歳から49歳の幅だった」と書いています。ところが、採り入れた20件の一覧には、平均20.29歳のグループを含む研究と、平均56歳のグループを含む研究があります。採り入れの条件は「18歳より上の大人」で、上限は書かれていません。この食い違いについては、下の「論文の中で、数字が3か所食い違っています」で扱います。

「エネルギーが減ったからだ」とは言えません

著者の限界の3つめです。

食べる時間を縮めると、結果として食べる量も減ることがあります。だとすると、体重が減ったのは「食べる時間を縮めたから」ではなく「摂るエネルギーが減ったから」かもしれません。

論文は、摂るエネルギーの量を報告した試験が足りないので、食べる時間を縮めることの得が主に摂るエネルギーの減りによるものだとは言えないと書いています。

つまり、この論文は「何が効いたのか」の中身までは分けられていません。

交絡になりうるものを扱っていません

著者の限界の4つめです。年齢、性別、試験の大きさ、体の中身の測り方の違いといった、結果に影響しうるものを扱えていないと書かれています。

測り方の違いは、上で見たとおり3通り混ざっています。年齢も、下は平均20歳のグループから上は平均56歳のグループまであります。これらで分けた解析は、この論文にはありません。

この論文が答えていない問い

  • 何時間がいちばんよいのか。食べない時間が12時間の試験から20時間の試験までを、1つにまとめています。時間の長さで分けた解析はありません
  • 何週間やればよいのか。4週間の試験と52週間の試験が、同じ値にまとめられています
  • 運動を足したらどうなるのか。この論文が組み合わせの相手として扱ったのは、摂るエネルギーを減らすことだけです。運動を組み合わせた試験は、はじめから13件除かれています。ですからこの研究は、運動を足したらどうなるかには答えていません
  • 脂肪以外の重さを保つにはどうすればよいのか。この論文はそれを試していません
  • 標準体重の人がやったらどうなるのか。該当するのは4件、168人だけです

論文の中で、数字が3か所食い違っています

最後に、読むときに引っかかる3か所を書きます。はじめの2つは、本文の文章と、採り入れた20件の一覧(Table 1)を見比べると出てきます。3つめは、本文の1つの段落の中だけで出てきます。

1つめ。16時間の試験の件数です。

本文は「16時間が14件」と書いています。ところが、同じ文に並んでいる引用番号は12個しかありません。採り入れた20件の一覧で、食べない時間が16時間になっている研究を数えても12件です。

このうち2件は、16時間のグループを2つ持っています。1件は早い時間に食べるグループと昼に食べるグループ、もう1件は早い時間に食べるグループと遅い時間に食べるグループです。グループの数で数えれば14になります。

足し算でも確かめられます。12時間が2件、14時間が4件、16時間が12件、18時間と20時間で2件。合わせて20件です。ここで18時間と20時間をまとめているのは、本文が18時間2件・20時間1件と書いていて、その20時間の1件が18時間の2件のうちの1件と同じ研究だからです(この研究は食べる時間が4時間のグループと6時間のグループを持っています)。

ですから、本文の「14」は、研究の数ではなくグループの数を数えたもの、と読むのが筋が通ります。

2つめ。年齢の幅です。

本文は「参加者の年齢は21歳から49歳の幅だった」と書いています。ところが一覧には、平均20.29歳(標準偏差1.79)のグループを含む研究と、平均56歳(標準偏差13)のグループを含む研究があります。採り入れの条件も「18歳より上の大人」で、上限は書かれていません。

ですから、この記事では試験ごとの平均年齢を「およそ20歳から56歳」と書いています。

3つめ。はじめに集まった論文の件数です。

本文は、集まったのは4006件だと書いています。ところが、同じ段落には検索先ごとの件数も並んでいます。PubMed が825件、Cochrane Library が1127件、EMBASE が358件、Web of Science が652件、Scopus が532件です。

足してみてください。

  • 825+1127+358+652+532=3494

4006ではなく3494になります。そして、3494から重複した1612件を引くと、1882。これは、次の段で「残った」と書かれている件数にぴったり合います。

ほかの段は、全部合っています。1882から1789件を除くと93件。93から73件を除くと20件。73件の除外の理由も、13+18+25+9+8で73件です。

ですから、合っていないのは「4006件」のほうだけ、と読めます。流れ図の1段目は論文の書いたとおり4006件にしてありますが、その下の1882件は、検索先ごとの件数を足した3494件から重複1612件を引いた数と一致します。

3つとも、論文を読むときに本文の1文だけを信じると取り違える箇所です。論文も人が書いたものなので、本文の数字どうしや、本文と表の数字を突き合わせると、こういう食い違いが見つかります。どれも、元の段落や表に当たれば自分で足して確かめられる、という例として挙げました。

資金と利益相反

この研究は、資金の提供を受けていないと書かれています。どの助成機関からも支援を受けていない、という申告です。

著者は、利益相反はないと申告しています。

系統的レビューとメタ解析なので、倫理審査は不要だったと書かれています。登録は PROSPERO に CRD42022370215 で行われています。

この論文はオープンアクセスで、CC BY 4.0 のライセンスで公開されています。

元の論文のどこを見ればよいか

元の論文は、次のとおりです。

Sun Y, Liu Y, Ye W, Lebaka VR, Chenji V, Li W, Korivi M. Efficiency of time-restricted eating and energy restriction on anthropometrics and body composition in adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Int J Behav Nutr Phys Act. 2025;22(1):121.

DOI のリンクはこちらです。https://doi.org/10.1186/s12966-025-01812-w

この記事で扱ったことが、論文のどこにあるかを並べておきます。

  • 4006件から20件までの絞り込みと、除外の理由の内訳:Fig. 1 の流れ図と、Results の Systematic search findings の節
  • PRISMA に沿ったこと、PROSPERO の登録番号:Methods の Literature search strategy の節の最初
  • 5つの検索先と、2024年7月より前という締め、検索語の一覧:同じ節の後半
  • 採り入れの条件6つと、除いた条件5つ:Methods の Inclusion and exclusion criteria の節
  • データの取り出し方、変化の平均を式で計算した場合、比べる相手の人数を半分に割った処理:Methods の Data extraction の節と、Data analyses and statistical methods の節
  • 測った項目と、測る道具を記録したこと:Methods の Study outcomes and assessment methodologies の節
  • 偏りの評価の方法(RoB2 の5つの領域):Methods の Quality assessment の節
  • 重みづけ平均差が「前後の測定の差」の差であること:Methods の Data analyses and statistical methods の節の最初。要旨にも、結果を重みづけ平均差と95%信頼区間で表すと書かれています
  • I² の目安(25%・50%・75%)と、ランダム効果と固定効果の使い分け:同じ節の後半
  • 2通りの内訳の定義(縮めるだけ 対 制限をつけない/組み合わせ 対 エネルギーを減らすだけ):同じ節のいちばん最後
  • 20件・1242人、国と性別と健康の状態の内訳、測り方の件数:Results の Characteristics of the included studies の節の最初の段落。試験ごとの内訳は Table 1
  • 食べない時間の内訳、期間、グループが2つある3件:同じ節の2つめの段落
  • 偏りの評価の結果:Fig. 2A と Fig. 2B、および Results の Risk of bias の節
  • 体重 −1.39キロと内訳:Fig. 3 と、Results の体重を扱った節
  • 脂肪の重さ −1.00キロと内訳:Fig. 4 と、Results の脂肪の重さを扱った節
  • 脂肪の割合 −0.60%と内訳:Fig. 5 と、Results の脂肪の割合を扱った節
  • 脂肪以外の重さ −0.57キロと内訳:Fig. 6 と、Results の脂肪以外の重さを扱った節。全体の値に95%信頼区間が併記されていないことも、この節を見れば分かります
  • BMI −0.54と内訳:Fig. 7 と、Results の BMI を扱った節
  • 腹囲 −2.19センチと内訳:Fig. 8 と、Results の腹囲を扱った節
  • 「脂肪以外の重さを保つことには役立たない」「内訳のあいだに差はなかった」:Discussion の最初の段落
  • 脂肪以外の重さが減ったことへの著者の受け取り方、脂肪の割合が動かなかったことへの見立て、たんぱく質の記述がほかの文献からの引用であること:Discussion の、脂肪以外の重さを扱った段落
  • 「どちらも同じように減った」「組み合わせても上乗せの得はない」:Conclusions の節
  • 著者の限界4つ:Limitations の節(Discussion のうしろ、Conclusions の前にあります)。論文での順は、参加者のかたより、脂肪以外の重さの変化をさらに確かめる必要があること、摂るエネルギーを報告した試験が足りないこと、交絡になりうるものを扱っていないこと、の順です。この記事は読みやすさのために並べ替えてあります
  • 資金、利益相反、倫理審査、PROSPERO の登録:論文の末尾の申告の欄
  • 16時間の件数と年齢の幅の食い違い:本文は Results の Characteristics of the included studies の節。突き合わせる先は Table 1 の、食べない時間の列と年齢の列
  • はじめに集まった件数の食い違い:Results の Systematic search findings の節の最初の1文と、同じ段落に並んでいる検索先ごとの件数

見方を練習するために

この回で練習することは、2つです。

1つめ。数字を見たら、何と何の差なのかを探すこと。

1.39キロという数字は、強く残ります。ですがこれは、終わりの体重の差ではありません。食べる時間を縮めたグループの前後の変化と、比べたグループの前後の変化の、その差です。しかも、4週間から52週間かけたグループ全体の平均の差です。

内訳の0.58キロと0.56キロについても同じです。この2つは、比べた相手が違います。片方は食事に制限をつけない人たちとの差、もう片方はすでに摂るエネルギーを減らしている人たちとの差です。並んでいるからといって、大小をそのまま読み比べることはできません。なお、論文自身は内訳どうしを比べていて、その答えは「差はなかった」です。結論の節では「どちらも同じように減った」と書かれています。

2つめ。その数字が、何を測ったものなのかを探すこと。

「脂肪以外の重さ」は、筋肉ではありません。脂肪ではない部分をまとめた重さです。この論文には、そこに何が入るのかの定義すら書かれていません。

ニュースや見出しは、ここを言い換えてしまいます。「脂肪以外の重さが減る側に動いた」が「筋肉が落ちる」になると、論文が測っていないことを言ったことになります。

この2つをまとめると、覚えることは1行です。

何キロ減ったかではなく、誰と比べて、何を測った数字なのかを見る。

この見方に一番近い本として、『統計でウソをつく法』を挙げておきます。グラフや数字の見せ方で、受け取り方がどれだけ変わるかを扱った本です。平均の取り方、割合の分母、幅を書かないこと。数字そのものは正しいのに、読む側の受け取りだけがずれていく例が並んでいます。この記事のページでは、この書名にアフィリエイトのリンクを付けています。

最後に、もう一度だけ書いておきます。

この論文で言えたのは、食べる時間を縮めたグループで、体重と脂肪の重さが減る側に動き、同時に脂肪以外の重さも減る側に動いていた、ということまでです。それが筋肉の減りなのかは、この論文からは分かりません。そして、ここで扱ったのは1つの論文の中にある平均の差と、その幅の読み方だけです。

元の論文

Sun Y ら. Int J Behav Nutr Phys Act. 2025.
https://doi.org/10.1186/s12966-025-01812-w

もっと知りたい人へ

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『統計でウソをつく法』